世界史マニアのためのゲーム:EU2

はぁ、遅れてもうたべ。すんません、白キツネです。

ひとまず、FKのヘタレに一部訂正。私が指摘したSEED・Dのあの変形ロボットの問題点は、実際の兵器っぽいリアルさというガンダムの味の欠如、つまりは、現実的に
「変形」「合体」に意味がまったくないだろう、と言うことなのだ。

判りやすく言えば、

「ミッドウェイの戦訓を忘れたか」

ということである。
兵器換装などというもっとも危険な行為を外で、敵の面前でやっちまったり、別の機体を二つ作ればいいものをなぜか変形させてひとつの機体を作ってみたりするようなリアルでないやり口をガンダムでやってほしくなかったということである。ファーストとポケ戦のファンとしては。旧日本軍のグライダー付き戦車は紛れもない失敗作に終わったのだし。


さて、そんなことはいいとして、今日は萌えの間隙を縫って、お気に入りなゲームの紹介でも。

「ヨーロッパユニヴァーサリス2 アジアチャプターズ」
先に言っておくと、世界史マニアによる世界史マニアのためのIF世界史シュミレートゲームです。

ひとまず、1819年の時点でヨーロッパ世界が到達し得た全ての世界を舞台とした国家戦略シュミレーションゲーム。プレイヤーはひとつの国家を影で操る黒幕(説明書から引用)となって、英仏百年戦争が終盤に差し掛かり、大航海時代が始まろうとする1419年から、フランス革命を経てナポレオン戦争の嵐が欧州を包み、ウィーン体制で決着する1820年までの、ヨーロッパが世界の一地方から、世界の中心へと躍進した「近代」400年間を生き抜いていく。

このゲームが他の戦略SLGと異なるのは、「国家戦略」というものをリアルに捉えている点。
ゲームの目的は世界征服などではなく、「国家が生き延び繁栄すること」。
外交・戦争・内政・交易・反乱など種々の政策・事件の結果として「勝利ポイント」が増減し、その高低を競う。
つまり、小国は小国なりに、生き延びて、外交努力や小規模な対外戦争を勝ち抜き、反乱を抑えて安定した内政をこなせば、拡張主義を取る大国より高い順位に付くことも出来るのだ。実際、無難な統治でインドシナ半島に割拠した大越が約200カ国中2位で、南北アメリカの過半を征したものの国内で内乱が頻発し、インフレが暴騰しているスペインがそれより低い6位なんてことがあった。

以下特筆すべき特徴点
・思想の対立
革新主義VS保守主義重商主義VS自由主義農奴制VS自由農民制などなどの思想対立があり、これらどちらに偏るかを選択しながら時代は進む。
たいていの、特に国産SLGだと、こういう判断は倫理的な感覚で従っていれば良い。三国志でも略奪コマンドはデメリットが多すぎたし、信長の野望でも民の忠誠度は上げやすく、かつ上げればデメリットなどなかった。つまり心がけで簡単に「名君」になれる上に、「名君」になることにデメリットなどなかったのだ。

しかし、さすがはマキアベリを生んだヨーロッパ人は違う。革新は技術は上がりやすくなるが、保守主義は内政が安定する。自由農民制は生産性は上がるものの独立心を持った農民達は反抗的になり、強圧的な農奴制はとくに反乱の起因となる貴族層を取り込んで国家を安定させる。といった具合に、生産性や技術効率、内政の安定度の兼ね合いが非常に難しい。往々にして、軍隊の力で反乱を抑えつつ、自らの政策を進めることになり勝ちである。

・貿易や財政
金は大事である。いつの世も。貿易はこのゲームでも重要な集金手段であり、交易所の開設、市場の開拓、交易独占なdの種々の政策が用意されている上に、競争がない交易所は寂れていくなど、色々な趣向がこらされているのが嬉しい。
財政は技術投資と軍事維持費、国庫にそれぞれ配分するのだが、この時、安全策を取って国庫に金をためるとインフレが上昇し、全てのコストが割高になる。借金などしているとさらに悲惨である。金をためて早めに返済を急ぐべきなのだが、国庫配分を増やすとインフレが上昇し、予算もなくコストばかりが増えて、軍隊も国内種々の技術も衰退し、税収は下がり、戦争に訴えて賠償金を取ることも望めなくなる。かといって返済を延ばせば、利子が増える……まさに、(現実に数多く出現した)悪循環が現出するのだ。(近い例だとWW1後のドイツだが)
ちなみに、国内が不安定化すれば当然、生産も税収も低下する。インフレと内乱のスパイラルもよく見られる。

・外交と戦争
こうした単純ながら非常に神経を使う内政に、宗教対立(無論これも内政に絡むが)や各国の勢力均衡を図って安全を求める諸国との外交の駆け引きが加わる。戦争は、長引けば国内を疲弊させ反乱を誘発して生産性を下げる上に、大義名分がなかったり、同宗教への開戦だったりすれば、国内の安定は脆くも崩れ去る。
版図を拡大させる国、特に拡大方法が自国からの開戦だったりする国には、諸国は突出した大国が出現することを恐れて、そうした国から距離を置いたり、時には牽制の戦争さえ仕掛けてくる。

版図拡大、税収拡大、国内安定、技術革新……これらを睨み、同盟・婚姻・懐柔・戦争・和平を繰り返し、国内では宗教・思想政策を細やかに取り扱いながら、400年間国家を運営していくのである。

世界史マニアに嬉しいのは、リアルに作ってある分往々にして歴史上実際に取られた戦略が、その通りの結果を導いてくれることである。たとえば、イングランド百年戦争後、大陸からの撤退を決意し、大ブリテン島の統合とアイルランドの併合で国力を蓄えることを選択し、海外進出を企図すると上手くいくが、大陸領に拘泥すれば、泥沼の二百年戦争に巻き込まれて国家の衰退を招く。日本は国内統治に専念すれば、朝鮮を外交的に属国化できるほどの国力が蓄えられるが、対外戦争に打って出れば、明と満州さらに通過点である朝鮮にうるさく蠢動され、国内反乱も多発する。(しかし、かなりの版図拡大は望めるのだが…)

ちなみに、以上のように、国家戦略や歴史IFを楽しむゲームなので、個々の戦闘はまったく自動的で介入できないし、人物も歴史上の人物が登場するにはするが、ほとんど目立たない。グラフィックスも簡易で、ボードゲーム+アルファ以上の何者でもない。まさに、ただただ、世界史との違いと国家戦略の機微、塩野七生好きが好きなタイプのマキアベリズムの呼吸といったものを楽しむためだけのゲームである。
ローマ人の物語」を読んでユリウス・カエサルに共感したり、義経よりも頼朝のほうが好きだったりする人物には是非プレイすることをお勧めする。

以上。ではまた。